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子供の頃からオリンピック選手になることが目標だった武田さん。
19歳で最初のチャンスであったアトランタオリンピック選考会を目前にして、さらに自分自身と向き合うことになる。
高校3年生で日本代表メンバーに選ばれていたので、必ずオリンピックに出られると確信していました。しかし、直前になって選考基準が見直されることとなり、代表選手から外されそうになりかけたんです。そんな時、コーチに「欠点を嘆くのではなく、抜きんでている力を最大限に生かして欠点をカバーしろ」と言われました。
自分の中でプロセスを踏んで、選考会までの練習メニューを考えました。そして、物事を実現するなら徹底的にリアルにイメージをしなければいけないと思うようになったんです。
完璧なビジュアルを頭の中でイメージする。そして実際の自分の練習風景をビデオに撮って分析するんです。結果、現実のビジュアルと自分のイメージがどれだけかけ離れているのかというのを知ることができます。すると自然に課題も明確に見えてくるのです。 
毎日、当たり前の事を当たり前のように過ごしていると、何の発見もない。けれど当たり前のベースがあるならば、そこに自分の工夫やアレンジを入れることで何か発見ができると考えたのです。

そして見事アトランタオリンピック出場の切符を手に入れることとなりますよね。
自己分析を繰り返し、毎日一つずつ課題をクリアしていった結果、アトランタオリンピックの代表選手に選んでいただけました。本当に充実していた日々でしたね。子供の頃からの夢であったオリンピックにでることができる切符を手に入れることができたのですが・・・。

選考会に照準を合わせていたためなのか、やりきった後の「燃え尽き症候群」だったのか、実際にオリンピック代表選手の合宿が始まると「やらされてる感」が自分の中で大きくなってきてしまって。
10時間水中に入って練習を繰り返す。けれど、自分の手応えを何も感じることができない。そうなると良い演技もできなくなる。そんな悪循環の中で、指導してくれているコーチの言葉が、単に怒っている、怒鳴られているという安易なことでしか受け取らなくなってしまっていたんです。苦痛でしかない毎日。ただ無意味に過ぎていくだけの毎日だと分かっていても、そこから抜け出すことを考える気力すら生まれてこない。
そんな毎日の中で、オリンピックが終わった時に一番嬉しく感じたことはメダルを取ったことではなく、次の日からあの過酷な練習をしなくていいんだって思ったことでした。物事を嫌いになるっていうことは相当ネガティブな事で、仕事でも無味乾燥に毎日嫌々やっていると、不思議と顔がすごいブサイクになってくるんです(笑)。あの頃は、今振り返ると究極にシンクロを嫌になっていたのかもしれませんね。
そのネガティブなところから、気持ちが転換していった最大の理由。
一番大きな理由は、あんなに大好きだったシンクロのことを、こんなにネガティブな感情でやめてしまうのはすごく間違っているのだと本能的に感じた点です。
どん底のネガティブな感情から抜け出して、またシンクロを好きになるには、シンクロをやり続ける中で見つけていくしかないのだ、という考えになったのです。
その考えに行きつくには、井村コーチの存在そのものが大きかったですね。
実はアトランタで銅メダルを獲得した日に、井村コーチから「メダルを返しなさい」「あなた達はメダルをもらう資格がない」とまで言われたんです。
正直その言葉を聞いた時、「今日くらい労いの言葉をかけてほしい」という思いがまず先に出てきていて、コーチの言葉の本当の意味がわかりませんでした。自分の中でも最悪のコンディションだったことは十分にわかっている。「けれど、今日くらい・・・」という甘えの気持ちには勝てない精神状態だったんです。
このコーチに精神的についていくことができないなら、シンクロをやめる以外に選択肢はない。けれどシンクロを辞めることはできない自分がいる。なぜなら自分自身の中での納得ができていないから・・・。ちゃんと自身に手応えの感じられるメダルが欲しい・・・。
そんな自問自答を繰り返す中で「結局、シンクロを続けるならこのコーチについていくしかない。コーチの言葉の真意を理解できる自分に成長していかなければ、シンクロを続けることはできない」という一つの答えに辿り着きました。

そこからまた新たな自分探しが始まるんですね。
照準を4年後のシドニーオリンピックに合わせて、一年毎に自分を見つめなおすようにして、「自分は去年とどう変わったのだろうか」「どんな事がダメでどんな事が一歩前に進んだのかな」と、自分軸で考えてみる。よかった事については思いっきり自分を褒めてあげるんです。
この繰り返しで自分を直視することにより、それまでの3年間、自分は何てもったいないことをしていたんだとようやく気付きました。
そうして迎えたシドニーオリンピックでは前回(アトランタオリンピック)と違い、自分の中にしっかりとした想いとイメージを持って望むことができましたね。
「○○まで求めているものはできている。だからこそ私が次にいきたいのは○○なんだ」という風に、二言目が前向きなコメントに変わっていったんです。そうすることで、自然と練習の中でもリズムを持てるようになって。不思議ですね。自分が後ろを向いているか前を向いているかだけで、何もかもが違ってくるんです。
完璧な結果ではなくても、どれだけそのプロセスに自分が真剣になれたか、そしてどうやってそのプロセスを歩んできたかが大事だと思います。結果に満足できなくて反省をしても絶対に後悔はしたくない。そう考えることが常に前向きなレスポンスを見つけられ、心に余裕をもって歩んでいけることだと思っています。













